2011年6月1日水曜日

水番の記録


山の中には当然野生動物がいます。タヌキやアナグマは民家近くにも出没しますが、ちょっと山に入るとウサギやイノシシ、サルやシカがいるそうです。そして山の中を歩く際に最も出会いたくないのはクマです。
だからこの辺りの人たちは山に入る際には必ず「熊除けの鈴」を持ちます。人がいる気配を感じると動物達は前もって逃げていくからです。水番をする人はさらに山奥に入っていくので、遠くまで音の通る風鈴のような鈴を付けます。僕が使っているのは牛とか羊につけるカウベルですが、そのおかげか僕が水番の仕事を始めてから昨年の4ヶ月間で出会った野生の動物はかわいいリスだけでした。


先日、水番で山に入った際、しばらく歩いてからカウベルを付けるのを忘れていることに気付きました。車まで取りに戻ろうかとも思ったのだけれども、随分歩いてしまったからそれも面倒だし、何しろ今までも動物に出会ったことはないのだから、きっと今日も大丈夫だろう。などと考えていたところ、10メートルほど先のところにある草薮からガサガサッと巨大なカモシカが現れたかと思うと、ボクシングヘビー級チャンピオンのような軽快な足どりで、垂直に切り立つ断崖を駆け登って行ったのです。声を出すヒマも(もちろん写真を撮る余裕も)なく、しばらく全身が凍りついて動けなくなってしまいましたが、とりあえず考え直して、カウベルを取りに車まで戻りました。

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